第31回 夫婦で話し合いたい退職後のお金のこと|数字だけでなく価値観を共有する
1. はじめに:夫婦で「退職後」のイメージは同じなのか
退職後の生活について、夫婦で次のように考えが違うことがあります。
- 夫は「65歳で完全に仕事を辞めたい」と思っている
- 妻は「70歳くらいまで働いてほしい」と思っている
- 一方は「退職後は旅行を楽しみたい」
- もう一方は「老後が心配なので、できるだけお金を残したい」
- 一方は「住宅ローンを退職金で返済したい」
- もう一方は「手元に現金を残したい」
- 子どもや孫への援助について考え方が違う
同じ家庭で生活していても、退職後のお金に対する考え方まで同じとは限りません。
働き方やお金の使い方について、何を大切にしたいかをお互いに知っておくことが、退職後の計画を考える出発点になります。
この記事では、夫婦で話し合いたい退職後のお金のテーマと、考え方が違うときの整理の仕方を確認します。
2. 結論:数字を決める前にどんな生活をしたいかを共有する
夫婦で退職後のお金を考えるとき、「老後資金はいくら必要か」「毎月いくら使えるか」「何歳まで働くか」といった数字が気になるものです。
その数字を決める前に、まず「どんな退職後の生活を送りたいか」を話してみましょう。
話し合いは、次の順序で進めると整理しやすくなります。
<夫婦で退職後のお金を話し合う3段階>
- 価値観を話す:退職後に何を大切にしたいかを伝え合う
- 数字に置き換える:希望する時期や回数、必要な金額の目安を考える
- 家計で確認する:夫婦の希望を収入・支出・資産と照らし合わせる
例えば、「旅行を楽しみたい」という希望があれば、「年に2回程度、国内旅行をしたい」と具体化し、「年間30万円程度を旅行費として見込む」といった形で家計の数字につなげます。
数字は、夫婦それぞれが望む暮らしを考えたうえで決めるものです。
3. 基本知識:夫婦で共有したい退職後のお金の7つの視点
① 何歳まで、どのように働きたいか
働く期間は、退職後の収入だけでなく、自由に使える時間にも関わります。
夫婦それぞれについて、次のことを話してみましょう。
- 何歳まで働きたいか
- 再雇用を利用するか
- 完全に仕事を辞めたい時期はいつか
- 仕事を続けたい理由は、収入か、生きがいか
- 配偶者はいつまで働くことを考えているか
働き方は、お金に加えて、健康や自由時間、家族との時間も含めて考えることが大切です。
② 退職後、何にお金を使いたいか
旅行、趣味、外食、車、住まい、学び、友人との付き合い、子どもや孫への支援など、退職後にお金を使いたいことは人によって異なります。
夫婦で同じ支出を大切に思っているとは限りません。
まずはそれぞれが「これは大切にしたい」と思うことを挙げてみましょう。
何にお金を使いたいかを知ることは、相手が望む退職後の生活を知ることにもつながります。
③ どのくらいお金を残しておきたいか
同じ資産額でも、お金の使い方に対する考え方は異なります。
- 元気なうちに積極的に使いたい
- できるだけ資産を減らしたくない
- 子どもに残したい
- 自分たちの生活のために使いたい
「いくら使いたいか」だけでなく、「どのくらい残しておきたいか」も、夫婦で話し合いたいテーマです。
その理由まで聞いてみると、考え方の違いを理解しやすくなります。
④ 住まいと車をどうするか
住まいと車は、退職後の暮らし方と支出の両方に関係します。
- 今の家に住み続けたいか
- リフォームを考えているか
- 住み替える可能性はあるか
- 車をいつまで持ちたいか
- 将来、施設への入居をどう考えるか
住まいの修繕や住み替え、車の買い替えには大きな支出が伴うことがあります。
どのように暮らしたいか、いつ費用が必要になるか、を一緒に考えましょう。
⑤ 子ども・孫・親への支援をどう考えるか
家族への支援も、夫婦で考え方が分かれやすいテーマです。
例えば、子どもの住宅取得や孫の教育費を援助するか、お祝いにどのくらい使うか、親の介護費をどこまで支援するか、といったことが挙げられます。
支援したい気持ちを大切にしながら、「してあげたいこと」と「自分たちができる範囲」を分けて考えることが必要です。
⑥ 医療・介護について希望を共有する
医療や介護の話は、お金だけでは決まりません。
介護が必要になった場合について、在宅で暮らすことを希望するか、施設も選択肢とするか、家族にどこまで頼りたいかなど、今の考えを伝え合ってみましょう。
民間保険をどう考えるか、介護のためにどの程度の資金を残したいかも話し合うテーマになります。
将来の希望が変わることもあります。
まずは現時点での考えを共有しておくことが大切です。
⑦ 一致していることと、違っていることを分ける
夫婦で話した内容は、「一致していること」と「違っていること」に分けると整理しやすくなります。
<一致していることの例>
- 65歳までは働く
- 今の家には住み続ける
- 年1回は旅行する
<違っていることの例>
- 車をいつ手放すか
- 子どもへの援助額
- 資産をどのくらい残すか
大切なのは、考えをすぐに一致させることよりも、どこが同じで、どこが違うのかを知ることです。
違いが分かれば、次に何を話し合うかも見えてきます。
4. 注意点:夫婦のお金の話を進めるときに気を付けたいこと
注意点1:いきなり金額から話し始めない
最初から「そんなに使うの?」「そんなに残す必要があるの?」と金額の話になると、互いの希望が伝わりにくくなることがあります。
まずは、なぜその使い道や備えを大切にしたいのかを聞いてみましょう。
注意点2:自分の考えを「当然」と思わない
「退職したら働かないのが普通」「健康なら70歳まで働くのが普通」「退職金は住宅ローン返済に使うもの」といった考え方は、配偶者も同じとは限りません。
自分にとって普通でも、相手には別の考えがあるかもしれないと想像して話すことが大切です。
注意点3:家計を管理している人だけで決めない
夫婦の一方が主に家計を管理している場合も、退職後の生活については二人で考えたいところです。
資産額や年金の見込み額を共有し、それぞれが希望する暮らしについて話しましょう。
数字と希望の両方を、夫婦で確認することが必要です。
注意点4:一度の話し合いですべてを決めようとしない
50代から退職までの間にも、給与や再雇用の条件、健康、親の介護、子どもの状況などは変わることがあります。
今すぐ決められないことは、そのまま確認項目として残しておきましょう。
生活や家計の状況が変わったとき、改めて夫婦で話し合いましょう。
注意点5:希望を話すだけで終わらせない
お互いの希望を知ったら、実現に必要な時期や金額の目安も考えてみてはどうでしょう。
例えば、旅行や住まいの修繕、家族への支援を予定しているなら、生活費とは分けて書き出します。
希望を家計の数字につなげると、実現できそうなことと、調整が必要なことを考えやすくなります。
5. 自分ごと化:夫婦で確認したい10の項目
次の項目について、夫婦それぞれの考えを確認してみましょう。
- 何歳まで働きたいと思っているか
- 退職後、どんな毎日を送りたいか
- 旅行・趣味など、何にお金を使いたいか
- 今の住まいに何歳まで住みたいか
- 車をいつまで持ちたいか
- 子どもや孫への援助をどう考えているか
- 医療・介護について、どのような希望があるか
- 退職金を何に使いたいか
- 資産をどのくらい残しておきたいか
- お金に余裕があれば、何をしたいか
このうち、最初に話したいのは、1・3・9です。
1. 何歳まで働きたいか / 3. 何にお金を使いたいか / 9. 資産をどのくらい残したいか
この三つを聞くと、夫婦それぞれが思い描く働き方、お金の使い方、将来への備えが見えてきます。
まずは一人ずつ、この三つへの答えを書き出してみましょう。
その後で見せ合い、同じ考えと違う考えを一つずつ確認することから始めてください。
6. まとめ:退職後の計画には、夫婦それぞれの希望を反映する
夫婦であっても、退職後の働き方や、お金を使いたいこと、残しておきたい金額が同じとは限りません。まずは互いの希望を知り、違いがあるところを確認することが大切です。
話し合った内容は、時期と金額の目安に置き換えると、退職後の家計の中で考えやすくなります。
<今日のポイント>
- 夫婦でも、退職後の生活に対する考え方は同じとは限らない
- 数字を決める前に、どんな暮らしをしたいかを話す
- 働く期間は、収入と自由時間の両方に関わる
- 旅行や趣味など、それぞれが大切にしたい使い道を知る
- 「いくら使いたいか」と「どのくらい残したいか」を確認する
- 住まい、車、家族への支援、医療・介護についても話す
- 一致していることと、違っていることを分けて整理する
- 一度ですべてを決めず、状況が変われば話し直す
- 希望を時期と金額の目安に置き換える
- 最後に、夫婦の希望を退職後の収支と資産の推移に反映する
夫婦で話し合った希望を、年金の見込み額、退職金、生活費、資産などの数字とあわせて確認すると、「できそうなこと」と「調整が必要なこと」を整理できます。
ご夫婦の退職後のお金について具体的に考えたい場合は、まず現在の状況と、話し合いたい課題を書き出してみましょう。
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出典・参考(2026年10月1日現在)
日本FP協会「今からはじめるリタイアメントプランニング」
日本FP協会「FP相談の流れ」
※本記事は、夫婦で退職後の生活とお金について話し合うための一般的な情報を提供するものです。
※必要な生活費や将来の資産の推移は、働き方、家族構成、支出、保有資産などによって異なります。
※キャッシュフロー表を作成する場合も、その結果は将来の収支や資産残高を保証するものではありません。
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