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年金の基本と活用

第13回 自分の年金額を調べる方法|受給開始時期や働き方による変化を試算する

1. はじめに:自分はいくら年金を受け取れるのか

第12回では、ねんきん定期便とねんきんネットの違い、確認したい項目、見込み額を見るときの注意点を整理しました。
次に行いたいのが、今後の働き方や年金の受け取り開始時期を変えた場合に、年金額がどのように変わるのかを試算することです。

    • 自分はいくら年金を受け取れるのでしょうか。
  • ねんきん定期便に記載された金額を、そのまま使えばよいのでしょうか。
  • 60歳で退職する場合と、65歳まで働く場合では、年金額はどのように変わるのでしょうか。
  • 年金の受け取り開始時期を変えると、どのくらい違いが出るのでしょうか。
  • 年金事務所に相談した方がよいのは、どのような場合でしょうか。

50代になると、退職後のお金を考えるうえで、「自分はいくら受け取れるのか」が気になってきます。
しかし、年金額は現在の加入記録だけで決まるわけではありません。
今後の給与、厚生年金に加入して働く期間、退職時期、年金の受け取り開始時期などによって変わります。

退職後のお金を考える第一歩は、自分の年金の見込み額を確認し、複数の条件で比較することです。

この記事では、ねんきん定期便、ねんきんネット、年金事務所などを利用して、自分の年金額を調べる方法を順番に整理します。

2. 結論:基準額を確認してから複数の条件を比較する

自分の年金額を調べるときは、次の順番で進めると整理しやすくなります。

 <年金額を調べるおすすめの順番>

順番 方法 確認すること
1 ねんきん定期便 現時点の年金の見込み額と加入記録を確認する
2 ねんきんネットのかんたん試算 現在の働き方が60歳まで続いた場合を確認する
3 ねんきんネットの詳細な条件で試算 退職時期、再雇用、給与、受給開始年齢などを変えて比較する
4 年金事務所など 個別事情や年金記録の不明点を確認する

最初に、ねんきん定期便で現在の見込み額を確認します。
次に、ねんきんネットで、60歳で退職する場合、65歳まで再雇用で働く場合、年金の受け取り開始時期を変える場合などを試算します。
年金記録に違和感がある場合や、個別事情がある場合は、年金事務所などで確認します。

大切なのは、1つの見込み額だけで判断せず、退職時期・働き方・受け取り開始時期の異なる複数のパターンを比較することです。

3. 基本知識:3つの方法で自分の年金額を確認する

① ねんきん定期便で基準となる金額を確認する

ねんきん定期便は、自分の年金額を調べるための最も身近な資料です。
まずは、「老齢年金の種類と見込額(年額)」を確認しましょう。
確認したいのは、次の3つです。

  • 老齢基礎年金の見込み額
  • 老齢厚生年金の見込み額
  • 2つを合計した公的年金の見込み額

記載されている金額は年額です。
年額を12で割ると、月額の目安を確認できます。
例えば、年額180万円の場合、単純に12で割ると、月額の目安は15万円です。

年金の見込み額を月額に直すことで、退職後の毎月の生活費と比較しやすくなります。

ただし、ねんきん定期便に記載された金額は、税金や社会保険料などを差し引く前の金額です。
また、60歳未満の50歳以上の方の見込み額は、現在の年金加入条件が60歳まで続くと仮定して計算されています。

そのため、ねんきん定期便の金額は確定額ではなく、次の試算を行うための基準額として考えましょう。

② ねんきんネットの「かんたん試算」を利用する

ねんきんネットでは、自分の年金記録に基づいて、将来受け取る老齢年金の見込み額を試算できます。
初めに利用したいのが「かんたん試算」です。

かんたん試算では、現在と同じ条件で60歳まで年金制度に加入し続けると仮定して、年金の見込み額が計算されます。
細かな条件を設定しなくても、現在の働き方の延長線上にある金額を確認できます。

まずは、次の項目を確認しましょう。

  • 老齢基礎年金の見込み額
  • 老齢厚生年金の見込み額
  • 65歳から受け取る場合の合計額
  • 年金額の内訳
  • 試算の前提となっている加入条件

 

かんたん試算の結果を、今後の比較の基準となる「基本パターン」にします。

③ 「詳細な条件で試算」で働き方を変えて比較する

ねんきんネットの「詳細な条件で試算」では、今後の働き方や年金の受け取り開始年齢などを設定できます。
50代会社員の方が比較したい主なパターンは、次のとおりです。

<比較したい働き方>

試算する条件 確認したいこと
60歳で退職する 厚生年金の加入が60歳で終わった場合の年金額
65歳まで再雇用で働く 厚生年金の加入期間が延びた場合の年金額
再雇用後に給与が下がる 給与水準の変化が年金額に与える影響
65歳以降も働く 給与収入と年金収入の組み合わせ
退職時期を変更する 働く期間の違いによる年金額の変化

60歳以降も厚生年金に加入して働くと、その加入期間や給与などが老齢厚生年金に反映されます。
一方、60歳で退職すると、65歳まで給与収入がなくなる可能性があります。
そのため、年金額だけでなく、60歳から65歳までの生活費をどのようにまかなうかも確認する必要があります。

「60歳で退職する場合」と「65歳まで再雇用で働く場合」は、50代のうちに比較しておきたい基本的な2つのパターンです。

④ 年金の受け取り開始時期を変えて比較する

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ります。
希望すれば、65歳より前に受け取る「繰上げ受給」や、65歳より後に受け取る「繰下げ受給」を選択できます。

  • 繰上げ受給:60歳から65歳になるまでの間に受け取り始める
  • 原則の受給:65歳から受け取り始める
  • 繰下げ受給:66歳以降75歳までの間に受け取り始める

繰上げ受給を選ぶと、早く受け取れる代わりに年金額が減額され、その減額率は生涯変わりません。
繰下げ受給を選ぶと、受け取りを遅らせた期間に応じて年金額が増額され、その増額率も生涯変わりません。

ねんきんネットでは、受け取り開始年齢を変更した場合の年金の見込み額を試算できます。
例えば、次のような比較が考えられます。

  • 65歳から受け取る場合
  • 60歳から繰り上げて受け取る場合
  • 70歳まで繰り下げて受け取る場合

受け取り開始時期は、年金額の大小だけで決めるものではありません。
退職後の給与収入、生活費、預貯金、健康状態、配偶者の年齢や年金なども含めて考える必要があります。

受け取り開始時期を判断するときは、「何歳から、いくら受け取れるか」と「受け取り開始までの生活費」をセットで確認しましょう。

⑤ 働きながら年金を受け取る場合を確認する

65歳以降も働きながら老齢厚生年金を受け取る場合は、在職老齢年金の仕組みにより、給与や賞与と老齢厚生年金の合計額に応じて、年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。
また、働きながら厚生年金に加入することで、その後の老齢厚生年金が増える場合もあります。

そのため、65歳以降も働く予定がある方は、次の2点を分けて確認しましょう。

  • 働いている間に実際に受け取れる年金額
  • 厚生年金への加入によって将来増える年金額

「働けば年金がすべて止まる」「働けば必ず年金が増える」と単純に判断せず、自分の給与と年金額を基に確認することが大切です。

⑥ 年金事務所などで個別事情を確認する

ねんきん定期便やねんきんネットだけでは判断しにくい場合は、年金事務所などで確認できます。
例えば、次のような場合です。

  • 年金加入記録に漏れや違和感がある
  • 転職回数が多く、加入履歴が複雑になっている
  • 退職や再雇用によって働き方が変わる
  • 配偶者に関する加給年金や振替加算を確認したい
  • 離婚時の年金分割に関する記録がある
  • 厚生年金基金や共済組合の加入期間がある
  • ねんきん定期便とねんきんネットの金額が異なっている
  • 繰上げ・繰下げ受給の注意点を確認したい

年金事務所で相談する場合は、事前に予約しておくとスムーズです。
相談内容によって必要書類が異なりますが、一般的には次のようなものを準備します。

  • ねんきん定期便
  • 基礎年金番号がわかるもの
  • マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類
  • 確認したい内容をまとめたメモ
  • 退職予定年齢や再雇用後の給与見込み
  • 配偶者の年金に関する資料

年金記録に疑問がある場合は、見込み額の試算だけで判断せず、年金事務所などで確認しましょう。

⑦ 試算結果を退職後の収入計画に組み込む

年金額を調べる目的は、金額を知ることだけではありません。
確認した年金の見込み額を、退職後の収入計画に組み込むことが大切です。
年金とあわせて確認したいのは、次の項目です。

  • 60歳から65歳までの給与収入
  • 企業年金
  • iDeCoなどの私的年金
  • 退職金
  • 預貯金
  • 資産運用
  • 退職後の生活費
  • 住宅修繕費、医療費などの特別支出

公的年金だけを見るのではなく、退職後の収入・支出・資産をキャッシュフロー表で時系列に整理することで、資産がどのように変化するかを確認できます。

4. 注意点:試算結果だけで受け取り方を決めない

注意点1:見込み額は確定額ではない

ねんきん定期便やねんきんネットに表示される金額は、一定の前提に基づく見込み額です。
今後の給与、厚生年金の加入期間、働き方、年金制度、受け取り開始時期などによって変わります。
退職時期や働き方を変更したときは、改めて試算しましょう。

注意点2:繰上げ・繰下げは金額だけで判断しない

繰上げ受給を選ぶと、年金額は生涯にわたって減額されます。
また、繰上げ請求後は取り消すことができません。
繰下げ受給を選ぶと年金額は増えますが、受け取りを始めるまでの生活費を別に用意する必要があります。
健康状態、就労収入、預貯金、家族構成なども含めて判断しましょう。

注意点3:働きながら受け取る場合は在職老齢年金を確認する

65歳以降も働く場合は、給与や賞与と老齢厚生年金の金額によって、年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。
一般的な説明だけで判断せず、ねんきんネットや年金事務所などで自分の場合を確認しましょう。

注意点4:ねんきんネットで試算できない年金もある

ねんきんネットの年金見込み額試算は、老齢基礎年金と老齢厚生年金が中心です。
障害年金や遺族年金は試算の対象外です。
また、加給年金などの家族に関する加算、共済組合の加入期間などは、試算に反映されない場合があります。
企業年金やiDeCoも、公的年金とは別に確認する必要があります。

注意点5:額面と手取り、本人と世帯を分けて考える

年金の見込み額は、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額です。
退職後の生活費と比較するときは、手取り額を見込む必要があります。
また、夫婦で退職後のお金を考える場合は、夫婦それぞれの年金の種類、見込み額、受け取り開始時期を確認し、世帯全体の収入として整理しましょう。

5. 自分ごと化:自分の年金額を確認する10の項目

次の項目について、ご自身の状況を確認してみましょう。

  1.  ねんきん定期便で老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込み額を確認しているか
  2.  年金の年額を12で割り、月額の目安を確認しているか
  3.  年金加入期間や加入記録に漏れがないか確認しているか
  4.  ねんきんネットのかんたん試算を利用しているか
  5.  60歳で退職する場合と65歳まで再雇用で働く場合を比較しているか
  6.  再雇用後に給与が下がる場合も試算しているか
  7.  年金を65歳から受け取る場合と、繰上げ・繰下げを選ぶ場合を比較しているか
  8.  65歳以降も働く場合の給与収入と年金額を確認しているか
  9.  配偶者の年金や企業年金・iDeCoなど、公的年金以外の収入も確認しているか
  10.  年金、生活費、退職金、預貯金などをキャッシュフロー表で確認しているか

このうち、特に重要なのは、5・7・10です。

5. 60歳退職と65歳までの再雇用を比較しているか / 7. 受け取り開始時期を変えた場合を比較しているか / 10. 年金を生活費や資産とあわせて確認しているか

 この3項目を確認すると、「働き方による年金額の変化」「受け取り開始時期による違い」「退職後のお金の全体像」を整理できます。

この記事を読んだ方は、まず、
ねんきんネットで次の2つの条件を試算してみましょう。

  • 60歳で退職し、65歳から年金を受け取る場合
  • 65歳まで再雇用で働き、65歳から年金を受け取る場合

そのうえで、受け取り開始時期を変更した場合も確認し、年金額と受け取り開始までの生活費を比較してみてください。

6. まとめ:年金額の試算は退職後の選択肢を比べるために行う

自分の年金額を調べることは、リタイア準備の出発点です。

 <今日のポイント>

  • まず、ねんきん定期便で現在の年金の見込み額を確認する
  • ねんきんネットのかんたん試算を比較の基本パターンにする
  • 詳細な条件で、60歳退職と65歳までの再雇用を比較する
  • 年金の受け取り開始時期を変えた場合も試算する
  • 働きながら受け取る場合は、在職老齢年金にも注意する
  • 個別事情や年金記録の不明点は、年金事務所などで確認する
  • 試算結果を生活費、退職金、預貯金などとあわせて考える

年金の見込み額は、将来を正確に当てるための数字ではなく、退職後の選択肢を比較するための数字です。
ご自身の場合、働く期間や年金の受け取り開始時期によって、退職後の収入や預貯金の減り方がどのように変わるのかを確認したい方は、複数のキャッシュフロー表を比較するとわかりやすくなります。

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出典・参考(2026年9月25日現在)

日本年金機構「『ねんきんネット』とは?」
日本年金機構「『ねんきんネット』による年金見込額試算」
日本年金機構「『ねんきんネット』の登録方法」
日本年金機構「年金の繰上げ受給」
日本年金機構「年金の繰下げ受給」
日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
日本年金機構「窓口での年金相談のご案内」日本年金機構「予約相談について」

※本記事は、公的年金に関する一般的な情報を提供するものです。
※実際に受け取れる年金の種類や金額は、生年月日、年金加入記録、給与、厚生年金の加入期間、受け取り開始時期などによって異なります。
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