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退職金

第22回 退職一時金と退職年金、どちらを選ぶべきか|受け取り方の違いと考え方

1. はじめに:一時金と年金、どちらが得なのか

第21回では、退職金の使い道を先に決めるのではなく、「生活を支えるお金」「将来に備えるお金」「使ってよいお金」に分けて考えることの大切さを整理しました。
次に考えたいのが、退職金をどのような形で受け取るかです。

勤務先や企業年金の制度によっては、退職金を一時金で受け取る方法、年金形式で受け取る方法、両方を組み合わせる方法から選べる場合があります。

  • 一時金と年金形式では、どちらが得なのでしょうか
  • 税金は、どちらが有利なのでしょうか
  • 毎月の生活費を補うには、どちらがよいのでしょうか
  • 住宅修繕や車の買い替えがある場合は、どう考えるのでしょうか
  • まとまったお金を使いすぎないか心配です

退職金の受け取り方は、受取総額や税金だけで決めるものではありません。
「いつ使うお金か」「何に使うお金か」「自分で管理できるか」を、退職後の収支とあわせて考えることが大切です。

なお、この記事では、企業年金などを分けて受け取る方法を「退職年金(年金形式)」と表現します。
選べる受け取り方や条件は、勤務先や制度によって異なります。

2. 結論:二者択一ではなく、お金の役割で考える

退職一時金と退職年金には、それぞれ異なる役割があります。

受け取り方 向いている目的 主な注意点
一時金 住宅修繕、車の買い替え、予備費など、まとまった資金を確保する 使いすぎや運用判断に注意する
年金形式 毎月・毎年の生活費不足を補う 受取期間、保証期間、死亡時の取り扱いなどを確認する
一時金と年金の併用 大きな支出と毎月の生活費の両方に備える 併用できるか、制度上の条件を確認する

一時金は「資産」、年金形式は「収入」として考えると、それぞれの役割を整理しやすくなります。
受け取り方を考えるときは、次の順序で確認しましょう。

  1.  勤務先の制度で選べる受け取り方を確認する
  2.  受け取り方ごとの手取り額を確認する
  3.  退職後の毎月の収支を確認する
  4.  まとまった支出と予備費を確認する
  5.  自分や夫婦にとって管理しやすい方法を考える

一時金と年金のどちらが一般的に有利かではなく、自分の退職後の生活にどの受け取り方が合うかで判断します。

3. 基本知識:退職一時金と退職年金を整理する7つの視点

① 自分が選べる受け取り方を確認する

最初に確認したいのは、勤務先や企業年金の制度で、どのような受け取り方を選べるかです。

  • 全額を一時金で受け取る
  • 全額を年金形式で受け取る
  • 一時金と年金形式を組み合わせる
  • 受取期間を複数の選択肢から選ぶ

すべての制度で自由に選べるわけではありません。
受け取り方によっては、選択期限が設けられていたり、いったん選択すると変更できなかったりする場合もあります。

まず、勤務先の退職金規程や企業年金の案内資料で、選択肢と手続期限を確認しましょう。

② 一時金は「まとまった資産」として受け取る

退職一時金は、退職時などにまとまった金額を受け取る方法です。
住宅ローンの返済、住宅修繕、車の買い替え、公的年金の受給開始までの生活費、医療・介護の予備費などに対応しやすい特徴があります。

一方、自由に使える金額が大きく見えるため、予定していなかった支出や、経験のない資産運用に回してしまうことがあります。
一時金で受け取る場合は、受け取った後に、

  • 近いうちに使うお金
  • 将来に備えて残すお金
  • 当面使わないお金

に分けて管理することが大切です。

③ 年金形式は「退職後の収入」として受け取る

年金形式は、退職金や企業年金を一定期間または終身などで分けて受け取る方法です。
毎月・隔月・年単位などで継続的に受け取るため、退職後の生活費を補う収入として家計に組み込みやすくなります。

まとまったお金を一度に管理することが不安な方や、使いすぎを防ぎたい方には、年金形式が合う場合があります。
ただし、年金形式には、有期年金、終身年金、保証期間のある年金などがあります。

年金形式を選べば必ず一生受け取れるわけではありません。
受取期間、保証期間、本人が亡くなった場合の取り扱い、途中変更の可否を確認する必要があります。

④ 一時金と年金形式では税金の扱いが異なる

確定給付企業年金などを一時金として受け取る場合は、一般に退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。

一方、年金形式で受け取る場合は、一般に公的年金等に係る雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象になります。
公的年金などの他の収入とあわせて所得を計算するため、所得税・住民税や社会保険料に影響する場合があります。

また、同じ年や一定期間内に複数の退職一時金を受け取る場合などは、退職所得控除の計算が変わることがあります。
額面の受取額だけでなく、税金などを差し引いた後の手取り額で比較することが重要です。

⑤ 毎月の生活費と大きな支出を分けて考える

退職後に必要なお金は、毎月の生活費と、一時的に発生する大きな支出に分けて考えます。

毎月の生活費には、食費、住居費、水道光熱費、保険料、医療費などがあります。
大きな支出には、住宅修繕、車の買い替え、旅行、家族への援助、医療・介護費などがあります。

年金形式は毎月の生活費不足を補いやすい一方、大きな支出には対応しにくい場合があります。
一時金は大きな支出に対応しやすい一方、生活費として計画的に取り崩さなければ、想定より早く減る可能性があります。

⑥ 制度上可能であれば、組み合わせも考える

退職金の受け取り方は、一時金か年金形式かの二者択一とは限りません。
制度上可能であれば、次のように役割を分ける方法があります。

お金の目的 受け取り方の考え方
住宅修繕・車の買い替え 一時金で確保する
当面の生活費・予備費 一時金で手元に残す
毎月の生活費不足 年金形式で補う
医療・介護への備え 別枠の予備費として残す

一時金と年金形式を組み合わせることで、手元資金を確保しながら、退職後の定期収入を増やせる場合があります。
ただし、併用できる割合や受取期間などは制度によって異なります。

⑦ キャッシュフロー表で受け取り方を比較する

受け取り方を決める前に、少なくとも次の3つのケースを比較してみましょう。

  • 全額を一時金で受け取る場合
  • 全額を年金形式で受け取る場合
  • 一時金と年金形式を組み合わせる場合

それぞれについて、受取時期、手取り額、退職後の収入、生活費、大きな支出、将来の資産残高をキャッシュフロー表に反映します。
受け取り方は、受取時点の金額だけでなく、その後の資産がどのように変化するかまで確認して判断します。

4. 注意点:税金や受取総額だけで決めない

注意点1:選べる受け取り方を思い込みで判断しない

一時金、年金形式、併用のすべてを選べるとは限りません。
勤務先や企業年金の資料で、選択肢、申込期限、受取開始時期、途中変更の可否を確認しましょう。

注意点2:税金の有利・不利だけで決めない

税負担が少ない受け取り方が、必ずしも生活しやすい受け取り方とは限りません。
税金に加えて、毎月の収支、大きな支出、資金管理のしやすさをあわせて考えます。

注意点3:「年金形式なら一生安心」と考えない

年金形式には、一定期間で受け取りが終了する有期年金もあります。
受取期間、保証期間、終身か有期か、本人が亡くなった場合の取り扱いを確認しましょう。

注意点4:受取総額だけで比較しない

年金形式の受取総額が一時金より多く見えても、受け取るまでの期間や税金、死亡時の取り扱いなどが異なります。
額面の合計だけでなく、手取り額と受け取る時期を確認することが大切です。

注意点5:一時金をすぐに使ったり運用したりしない

退職金は、長い退職後の生活を支える大切な資金です。
まとまった金額を受け取っても、すぐに住宅ローンの返済、金融商品の購入、家族への援助などに使わず、退職後の収支を確認してから判断しましょう。

5. 自分ごと化:退職金の受け取り方を確認する10の項目

次の項目について、ご自身の状況を確認してみましょう。

  1.  一時金・年金形式・併用のうち、どの方法を選べるか確認しているか
  2.  一時金で受け取れる金額と手取り額を確認しているか
  3.  年金形式の年額・受取期間・手取り額を確認しているか
  4.  終身か有期か、保証期間や死亡時の取り扱いを確認しているか
  5.  一時金と年金形式を併用できるか確認しているか
  6.  退職後の毎月の収入と生活費の不足額を確認しているか
  7.  住宅修繕や車の買い替えなどの大きな支出を見込んでいるか
  8.  医療費・介護費などの予備費を確保しているか
  9.  まとまった資金を自分や夫婦で管理できるか考えているか
  10.  受け取り方ごとのキャッシュフローを比較しているか

このうち、特に重要なのは、1・6・10です。

  1. 自分が選べる受け取り方を確認すること / 6. 退職後の毎月の不足額を確認すること / 10. 受け取り方ごとのキャッシュフローを比較すること

この3項目を確認すると、「どの方法を選べるのか」「年金形式で補う必要があるのか」「一時金をどの程度残す必要があるのか」が見えやすくなります。

まずは、次の資料を用意してみましょう。

  • 勤務先の退職金規程・企業年金制度の資料
  • 一時金と年金形式の受取見込み額
  • ねんきんネットなどで確認した公的年金の見込み額
  • 現在の生活費と退職後に予定している大きな支出
  • 預貯金・運用資産・住宅ローンなどの一覧

そのうえで、「全額一時金」「全額年金形式」「一時金と年金形式の併用」の3つのケースを比べてみましょう。

6. まとめ:二択ではなく「役割」で選ぶ

今回のポイントは、次のとおりです。

 <今日のポイント>

  • まず、勤務先の制度で選べる受け取り方を確認する
  • 一時金は「資産」、年金形式は「収入」として考える
  • 一時金は大きな支出に対応しやすいが、受け取った後の管理が必要になる
  • 年金形式は生活費に組み込みやすいが、受取期間や死亡時の取り扱いを確認する
  • 一時金と年金形式では、税金の扱いが異なる
  • 制度上可能であれば、目的に応じて両方を組み合わせる
  • 手取り額と退職後のキャッシュフローを比較して判断する

退職一時金と退職年金のどちらが正解かではなく、退職後のお金をどのように使い、管理したいかによって、自分に合う受け取り方は変わります。
ご自身の場合、どの受け取り方が退職後の生活に合うのかを確認したい方は、退職金、年金、生活費、大きな支出をキャッシュフロー表に反映して比較するとわかりやすくなります。

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出典・参考(2026年9月27日現在)

国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「確定給付企業年金等に係る課税関係」
国税庁「公的年金等の課税関係」
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第15 私的年金(企業年金・個人年金)」

※本記事は、退職金・企業年金の受け取り方や税金に関する一般的な情報を提供するものです。
※選べる受け取り方、受取金額、受取期間、税額などは、勤務先の制度、勤続年数、過去の退職金の受取状況などによって異なります。
※退職金制度や受取手続きについては勤務先や企業年金の運営機関に、税金については税務署や税理士などに最新の情報をご確認ください。

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