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退職後の収入

第33回 副業・短時間勤務で老後収入を補う考え方|収入補完と生きがいの両面で考える

1. はじめに:退職後もフルタイムで働かなければならないのか

第32回では、働きながら年金を受け取る場合の仕組みを確認しました。
今回は、退職後にどのくらい、どのように働くかを考えます。

「年金だけでは少し足りない。でも、65歳以降もフルタイムで働き続けたいわけではない」。
50代会社員の方には、このような気持ちがあるかもしれません。

  • 年金だけで生活できるか不安がある
  • 退職後も多少の収入は得たい
  • 週2~3日くらいなら働きたい
  • これまでの経験や資格を生かしたい
  • 副業を退職後の仕事につなげたい
  • 収入だけでなく、人とのつながりも持ちたい

退職後の働き方は、現役時代と同じように働き続けるか、完全に仕事を辞めるかの二択ではありません。
短時間勤務や小さな副業など、ご自身の生活に合わせた選択肢もあります。

この記事では、収入を補うことと、仕事から得られる張り合いの両面から、退職後の働き方を整理します。

2. 結論:必要な収入と、望む暮らしから働き方を決める

退職後の仕事を考えるとき、「月にいくら稼げるか」に目が向きがちです。
しかし、50代以降は、収入・時間・体力・やりがいをあわせて考える必要があります。

副業や短時間勤務には、主に次の三つの役割があります。

  1.  生活費に必要な収入を補う
  2.  預貯金などの取り崩しを抑える
  3.  社会とのつながりや生活の張り合いを得る

まず退職後の家計を見積もり、毎月いくら不足しそうかを確認します。
そのうえで、何歳まで、週に何日、どのような仕事なら続けられるかを考えましょう。

「できるだけ多く稼ぐ」ことを先に目標にせず、ご自身の生活に必要な収入を、無理のない働き方で得られるかを考えることが出発点です。

3. 基本知識:副業・短時間勤務を考える7つの視点

① 月数万円の収入でも家計への効果がある

「月5万円くらい働いても、あまり変わらない」と感じるかもしれません。
しかし、年間で見ると次の金額になります。

毎月の収入 年間の収入
月3万円 36万円
月5万円 60万円
月10万円 120万円

仮に月5万円の収入を10年間得られれば、単純計算で収入の合計は600万円です。

この金額を「資産が600万円増える」と捉えるのではなく、働いて得た収入を生活費に充てることで、預貯金や退職金の取り崩しを抑えられる可能性があると考えましょう。

なお、表の金額は税金・社会保険料や仕事にかかる費用を差し引く前の単純計算です。
実際に家計に使える金額は、手取りで確認する必要があります。

② 短時間勤務なら、生活に合わせて働き方を選べる

退職後も働くとして、フルタイムにこだわる必要はありません。

  • 週2~3日働く
  • 1日4~6時間働く
  • 午前中だけ働く
  • 繁忙期だけ働く
  • 自宅の近くで働く

このように、現役時代より仕事の時間や通勤の負担を抑える方法も考えられます。
働く日数や時間を決める際は、収入だけでなく、体力、家族との時間、趣味、親の介護、ご自身の通院なども踏まえましょう。

勤務時間を減らすことは、退職後の生活に仕事を合わせるための選択肢です。

③ 現役中の副業が、退職後の仕事につながることもある

現役中は本業以外の「副業」であっても、退職後には、それが個人で続ける仕事になる場合があります。
例えば、これまでの業務経験を生かした仕事、講師・相談業、原稿執筆、オンラインでできる仕事、地域での仕事などです。

私の場合も、現役中に「副業」として行っていたFPとしての活動が、今思えば「退職後のための助走期間」となっていたため、退職後の仕事としてFPを選ぶことに迷いはありませんでした。

ただし、好きなことや得意なことが、必ず収入になるわけではありません。
仕事を始める前に、誰に何を提供するか、費用はどのくらいかかるか、続けられそうかを考える必要があります。

現役中に副業を試す場合は、勤務先の就業規則や必要な届け出を確認しましょう。
別の勤務先にも雇用される場合は、労働時間の扱いにも注意が必要です。

④ 働くことには、収入以外の意味もある

仕事には、収入を得ること以外にも、次のような面があります。

  • 人と話す機会ができる
  • 社会との接点を持てる
  • 生活に曜日や時間のリズムが生まれる
  • これまでの経験を生かせる
  • 誰かの役に立っていると感じられる

こうしたことを仕事に求めるかどうかは、人によって異なります。
ご自身に合う仕事であれば、社会とのつながりや生活の張り合いにつながることもあります。

⑤ 必要な収入額は、退職後の家計から逆算する

働く目標額を決める前に、退職後の収入と支出を比べましょう。

例えば、年間支出が300万円、年金などの年間手取り収入が270万円なら、不足額は年間30万円です。
毎月に直すと、約2万5,000円になります。

この場合、まず検討したいのは、不足する月約2万5,000円を、どのような方法で補うかです。
仕事で補うなら、税金・社会保険料などを差し引いた手取りで考えます。

もちろん、旅行などの支出を増やしたい、資産の取り崩しをさらに抑えたいといった希望があれば、必要な金額も変わります。
世間の平均ではなく、ご自身の家計と暮らし方から目標を決めましょう。

⑥ 短時間勤務でも社会保険の加入条件を確認する

短時間勤務でも、勤務先や労働時間などの条件によっては、健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。

2026年10月現在、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者は、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではない、2カ月を超える雇用の見込みがあるなどの条件を満たすと、加入対象になります。
従来の「所定内賃金が月額8.8万円以上」という要件は、2026年10月に撤廃されました。

企業規模の条件は、2027年10月以降、段階的に縮小される予定です。
また、企業規模が基準に満たなくても、加入対象になる事業所があります。

「短時間だから社会保険に入らない」と決めつけず、勤務先での加入条件と、加入した場合の手取りを確認しましょう。
厚生年金保険は原則として70歳未満が加入対象となるため、働く年齢によっても扱いが変わります。

⑦ 雇用される仕事と、自分で行う仕事では扱いが異なる

副業には、別の会社でアルバイト・パートとして働く方法と、業務委託などで自分の仕事を行う方法があります。
働き方によって、税金、社会保険、労働法上の扱い、経費、確定申告の要否が異なります。

例えば、給与を1カ所から受け、その全額が源泉徴収の対象となる方は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。
一方、2カ所から給与を受ける場合には、別の判定が必要です。また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。

収入額だけを見て判断せず、どのような契約で働き、どのような所得を得るのかを確認しましょう。

4. 注意点:収入額だけで働き方を決めない

注意点1:少額の収入では意味がないと思わない

月数万円でも、年間や数年間で見ると、家計に一定の効果があります。
毎月の生活費を補い、資産の取り崩しを抑えられるかという視点で考えましょう。
ただし、仕事を続けられる期間や手取り額を過大に見込まないことも大切です。

注意点2:できるだけ多く働けばよいと考えない

働く時間を増やせば収入が増える一方、自由な時間が減り、体力的な負担が大きくなる場合があります。
税金や社会保険料が変わり、額面ほど手取りが増えないこともあります。
必要な手取り収入と、働くために使う時間・体力をあわせて確認しましょう。

注意点3:現役時代と同じ働き方を前提にしない

退職後も、これまでと同じ勤務日数や仕事内容を続けなければならないわけではありません。
家計に必要な収入を確認したうえで、短時間勤務など、生活に合う働き方を検討しましょう。

注意点4:「好きなことなら副業収入になる」と考えない

好きなことを仕事にする場合も、顧客、価格、契約、費用、継続性などを確認する必要があります。
最初から一定の収入を見込まず、小さく試して実際の収支を確かめることが大切です。
現役中に始める場合は、勤務先のルールも確認しましょう。

注意点5:生きがいのために無理をしない

仕事が張り合いになっても、健康や家族との時間を大きく損なっては、望んでいた退職後の生活から離れてしまいます。
仕事に求めるものを整理し、無理なく続けられる日数・時間・仕事内容かを定期的に見直しましょう。

5. 自分ごと化:退職後の働き方を考える10の項目

次の項目について、ご自身の状況を確認してみましょう。

  1.  退職後、毎月いくら収入が不足しそうか
  2.  月3万円・5万円・10万円の収入があると、家計はどう変わるか
  3.  何歳まで働きたいか
  4.  週に何日くらいなら無理なく働けるか
  5.  1日に何時間くらいなら無理なく働けるか
  6.  経験・資格・得意なことを生かせる仕事はあるか
  7.  仕事に収入以外の何を求めるか
  8.  雇用されて働くか、自分で仕事をするか
  9.  税金・社会保険料などを差し引いた手取りはいくらになるか
  10.  働く場合と働かない場合のキャッシュフロー表を比較したか

このうち、特に確認したいのは、1・7・10です。
1.毎月いくら補いたいか / 7.仕事に何を求めるか / 10.働き方によって家計がどう変わるか

この三つが分かると、必要な収入と、ご自身が望む生活に合う働き方を考えやすくなります。

まずは、退職後の生活費、年金の見込み額、預貯金などの残高を書き出しましょう。
そのうえで、働かない場合と、月数万円の手取り収入がある場合を比べてみてください。

6. まとめ:退職後の仕事は収入と暮らしの両面から考える

退職後の仕事には、生活費を補うことに加え、預貯金などの取り崩しを抑える役割があります。ご自身に合う仕事なら、社会とのつながりや生活の張り合いにつながることもあります。

一方で、働くほどよいとは限りません。必要な手取り収入を確かめ、健康や自由な時間とのバランスを考えることが大切です。

<今日のポイント>

  • 退職後の働き方は、フルタイムか完全退職かの二択ではない
  • 副業や短時間勤務も、老後収入を補う選択肢になる
  • 月数万円の収入でも、長期間では家計への効果がある
  • 働く収入は、資産の取り崩しを抑えることにもつながる
  • 仕事が社会とのつながりや生活の張り合いになる場合もある
  • 必要な収入額は、退職後の家計から逆算する
  • 額面の収入だけでなく、税金・社会保険料を引いた手取りを見る
  • 短時間勤務でも社会保険の加入条件を確認する
  • 副業は勤務先のルールや契約・税務上の扱いを確認する
  • 働く場合と働かない場合をキャッシュフロー表で比較する

退職後に「月5万円働く場合」と「完全に仕事を辞める場合」では、毎月の収支だけでなく、将来の資産残高や自由に使える時間も変わります。
いくら必要か、どのように暮らしたいかを整理してから働き方を選ぶことが、無理のないリタイア準備につながります。

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出典・参考(2026年10月16日現在)

厚生労働省「副業・兼業」
厚生労働省「適用拡大 Q&A|社会保険適用拡大特設サイト」
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

※本記事は、2026年10月16日現在の公表情報をもとに、一般的な情報を提供するものです。
※記事中の収入例は単純計算です。実際の手取りや資産の推移は、税金・社会保険料、仕事にかかる費用、働く期間などによって変わります。
※社会保険の加入条件や税務上の扱いは、年齢、勤務先、契約形態、ほかの収入などによって異なります。具体的な判断は勤務先や公的機関の最新情報をご確認ください。

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