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退職後の収入

第7回 退職後の生活費をどうまかなうか|年金・再雇用・資産運用の組み合わせ方

1. はじめに:退職後の生活費を何でまかなうか

第6回では、退職後の生活を支えるお金として、年金、働く収入、退職金、資産の取り崩しの4つを整理しました。
ただし、退職金は毎月入ってくる収入ではなく、退職後の生活を支えるまとまった原資です。
そのため今回は、毎年の生活費をどうまかなうかという視点から、年金、再雇用・再就職などの働く収入、資産運用・取り崩しの3つを中心に考えます。

  • 60歳以降も働いた方がよいのか
  • 公的年金が始まれば、生活費は足りるのか
  • 退職金や預貯金は、いつから取り崩すのか
  • 運用資産は、退職後にどのように使うのか

退職後は、年齢によって収入の主役が変わります。
年代ごとに考えると、どの収入と資産を組み合わせればよいかが見えやすくなります。

2. 結論:年代ごとに収入の主役を変えて考える

退職後の生活費は、次のように年代ごとの基本形を置くと整理しやすくなります。

<年代別の基本的な組み合わせ>

  • 60歳から64歳:働く収入を中心に、必要な分を資産で補う
  • 65歳から69歳:公的年金を中心に、働く収入や資産の取り崩しを組み合わせる
  • 70歳以降:年金を土台に、資産を守りながら計画的に使う

実際には、退職年齢、働く期間、年金の受け取り開始、生活費によって組み合わせは異なります。
まずは、年金と働く収入で生活費のどこまでをまかなえるかを確認し、足りない分を退職金・預貯金・運用資産から補います。

「退職後の生活費 − 年金・働く収入 = 資産から補う額」と考えると、必要な対策が見えやすくなります。

3. 基本知識:3つの収入・資金源と年代別の組み合わせ

生活費をまかなう3つの収入・資金源と、年代ごとの組み合わせを確認しましょう。

  1. 年金:退職後の継続収入の土台

公的年金は、退職後の生活を支える継続収入の土台です。
会社員の方は、主に老齢基礎年金と老齢厚生年金を確認します。

あわせて確認したいもの
企業年金、個人年金保険、iDeCo、企業型DCなど

年金だけで生活費が足りるかどうかは、年金額の多少だけでは決まりません。
年金の手取り額と、退職後の生活費との差を見ます。
終身で受け取る公的年金は、長生きにより生活費が必要になる期間が長くなるリスクへの備えになります。

  1. 働く収入:60代前半の資産取り崩しを抑える

再雇用・再就職などで働き続けると、生活費を補い、退職金や預貯金の取り崩し開始を遅らせられます。
働く期間を少し延ばすことは、後半の生活資金を残すことにつながります。

確認したい主な項目
手取り額、勤務日数・時間、契約期間、働き続けられる年齢、社会保険の加入など

収入面だけでなく、健康、家族との時間、生活のリズムも含めて、無理なく続けられる働き方を考えます。

  1. 資産運用・取り崩し:足りない分を計画的に補う

年金と働く収入だけで生活費をまかなえない場合は、退職金、預貯金、NISA口座の運用資産、iDeCo、企業型DCなどから補います。
資産運用は老後資金を補う手段ですが、運用益や分配金は毎年確実に得られる収入ではありません。

整理の基本
近い将来に使う生活費は預貯金などで確保し、すぐに使わないお金と分けて管理する

運用収入だけを当てにせず、元本の計画的な取り崩しも含めて考えます。

  1. 60歳から64歳:働く収入で資産の取り崩しを抑える

この時期は、定年後の給与が下がる一方で、生活費は急には減らない場合があります。
再雇用・再就職の手取り収入でどこまでまかなえるかを確認し、足りない分だけを退職金や預貯金から補います。

この時期のポイント
公的年金の受給開始までの不足額を把握し、資産を急速に減らさない

年金を繰り上げる場合や、65歳より前から受け取れる企業年金などがある場合は、その時期と金額も一緒に確認します。

  1. 65歳から69歳:年金を中心に不足分を補う

公的年金の受給を65歳から始める場合は、年金が生活費をまかなう中心になります。
企業年金や個人年金がある方は、あわせて確認します。
大切なのは、年金額だけを見るのではなく、年金の手取り額と生活費との差を確認することです。

不足がある場合の選択肢
働く期間を延ばす、支出を見直す、退職金・預貯金・運用資産から計画的に補う

公的年金の受け取りを繰り下げる場合は、受け取りを始めるまでの生活費を何でまかなうかも確認します。

  1. 70歳以降:資産を守りながら計画的に使う

70歳以降は、働く収入が減る、またはなくなり、年金が収入の中心となる方が多くなります。
生活費の不足に加え、住宅修繕、医療・介護などの支出も考慮し、資産をどのように使うかを考えます。

この時期のポイント
「近い将来に使うお金」「将来の予備費」「すぐに使わないお金」に分けて管理する

資産を減らさないことだけを目標にせず、必要なときに安心して使える状態を作ります。

  1. 組み合わせの比較:キャッシュフロー表で確認する

年金、働く収入、資産の取り崩しを、頭の中だけで組み合わせるのは簡単ではありません。
キャッシュフロー表に、それぞれの収入が始まる時期と終わる時期、生活費、資産残高を年ごとに並べます。

比較する例
60歳で完全退職する場合、65歳まで働く場合、70歳まで働く場合

働く期間や生活費、年金の受け取り開始を変えて比較すると、資産残高への影響と現実的な対策が見えやすくなります。

4. 注意点:安易な判断を避けるための5つの注意

年代別の組み合わせを考えるときは、次の点に注意しましょう。

注意点1:年金が始まれば安心と決めつけない

公的年金が始まっても、生活費との差によっては資産の取り崩しが必要です。
年金の額面ではなく手取り額を把握し、実際の生活費と比べます。

注意点2:再雇用・再就職の収入を過大評価しない

定年後は、賃金、賞与、勤務時間、契約期間が現役時代と変わる場合があります。
勤務先の制度や提示された条件を確認し、税金・社会保険料を考慮した手取りで見込みます。

注意点3:運用収入を固定収入のように考えない

資産運用には価格変動があり、分配金や運用益が毎年同じように得られるとは限りません。
生活費のすべてを運用成果に依存せず、年金と働く収入に対する補助的な手段として考えます。

注意点4:資産を取り崩すことを悪いことと考えすぎない

老後資金は、退職後の生活に使うために準備してきたお金でもあります。
資産が減ること自体を問題と考えず、生活費の不足額と取り崩す期間を把握し、計画的に使います。

注意点5:税金・社会保険料と制度の変更を見落とさない

年金、給与、企業年金、運用益などは、収入の種類や金額によって税金・社会保険料への影響が異なります。
キャッシュフロー表はできるだけ手取り額で作り、制度が変わったときは見直します。

5. 自分ごと化:年代別の組み合わせを確認する10の項目

以下の項目について、ご自身の状況を確認してみましょう。

  1.  退職後の毎月の生活費と、年間・不定期の支出を把握しているか
  2.  公的年金の見込み額と受け取り開始年齢を確認しているか
  3.  60歳以降の働き方と、給与収入がある期間を考えているか
  4.  再雇用・再就職後の給与を、手取り額で見込んでいるか
  5.  企業年金、個人年金、iDeCoなどの受け取り時期と金額を確認しているか
  6.  60歳から64歳までの生活費の不足額を確認しているか
  7.  退職金、預貯金、運用資産、保険、年金資産を一覧にしているか
  8.  65歳以降の生活費の不足を、どの資産から補うか考えているか
  9.  住宅修繕、医療・介護などに使う予備費を分けているか
  10.  完全退職する年齢を変え、複数のケースをキャッシュフロー表で比較しているか

特に重要なのは、1・2・7です。
これらは、必要な生活費、継続して受け取る年金、不足を補う資産という、退職後の収支を考える出発点です。

この記事を読んだ方は、まず、
退職後の年間生活費、公的年金の見込み額、退職時の保有資産を一つの紙に書き出す
ことから始めてみましょう。その上で、60歳以降も働く場合と働かない場合を比べます。

6. まとめ:生活費のまかない方を年代別に確認する

<今日のポイント>

  • 退職後の生活費は、年金、働く収入、資産の取り崩しを組み合わせてまかなう
  • 退職金は毎月の収入ではなく、生活費の不足を補う原資として考える
  • 60歳から64歳は、働く収入で資産の取り崩しを抑える
  • 65歳から69歳は、年金の手取りと生活費の差を資産で補う
  • 70歳以降は、予備費を確保しながら資産を計画的に使う
  • 運用収入を固定収入と考えず、生活費のすべてを運用成果に依存しない
  • 働く期間や年金開始時期の違いは、キャッシュフロー表で比較する

退職後の生活費のまかない方に、すべての方に当てはまる正解はありません。
大切なのは、どの年齢で、どの収入があり、生活費にいくら足りないのかを確認することです。
その上で、無理のない働き方、支出の見直し、資産の使い方を組み合わせ、定期的に見直していきましょう。

年代ごとの収入と生活費を整理し、どの時期に不足が生じやすいか確認したい方は、グリーンFP事務所の「リタイア診断相談」で、現在の状況と課題を一緒に確認します。
働く期間や年金の受け取り開始を変え、年齢ごとの収支と資産推移を比較したい方は、「リタイアメントプラン作成サポート」で具体的な見通しを作成します。
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出典・参考(2026年9月8日現在)

日本年金機構「ねんきんネット」
日本年金機構「老齢年金の制度」
厚生労働省「高年齢者雇用・就業対策」
金融庁「資産形成の基本」
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「金融リテラシー・マップ」

※本記事は、退職後の生活費をまかなう一般的な考え方を整理したものです。
※実際の収入・支出・受給開始時期・税金・社会保険料は、ご家庭ごとの条件によって異なります。
※年金、雇用、税制、NISA・iDeCo等の制度は変更されることがあります。
※具体的な判断をするときは、最新の公的情報や勤務先の資料をご確認ください。

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