第9回 再雇用で働くメリットと注意点|収入・体力・社会保険を整理する
1. はじめに:60歳以降も同じ会社で働き続けるべきか
60歳以降も、再雇用で同じ会社に残るべきでしょうか。
再雇用後の収入は、退職後の資産にどのくらい影響するのでしょうか。
また、体力や健康、社会保険については、何に注意すればよいのでしょうか。
「第8回 60歳から65歳までの収入空白期間をどう乗り切るか」では、60歳から65歳までの「収入空白期間」について整理しました。
その期間を乗り切るための代表的な選択肢が、再雇用で働くことです。
再雇用には、次のような効果が期待できます。
- 60歳以降も収入を得られる
- 退職金や預貯金の取り崩しを抑えられる
- 社会とのつながりや生活リズムを保ちやすい
- 完全リタイアまでの移行期間として活用できる
一方で、定年前より給与が下がったり、仕事内容や立場が変わったりすることもあります。
そのため、再雇用を選ぶかどうかは、収入だけでは判断できません。
「いくら受け取れるのか」に加えて、「無理なく続けられるか」「社会保険はどうなるか」「どのような生活を送りたいか」を一緒に考える必要があります。
2. 結論:収入・体力・社会保険・生活の4つの面から考える
再雇用は、単に給与収入を得るためだけのものではありません。
退職金や預貯金の取り崩しを遅らせ、65歳以降の生活に余裕を持たせるための有効な選択肢です。
ただし、働き続けることが、すべての人にとって最善とは限りません。
再雇用を検討するときは、次の4つの面から判断します。
- 収入面:税金や社会保険料を差し引いた手取りはいくらか
- 体力面:勤務日数、勤務時間、通勤を無理なく続けられるか
- 社会保険面:厚生年金、健康保険、雇用保険はどうなるか
- 生活面:家族との時間や退職後にやりたいことと両立できるか
家計に与える効果は、次のように考えることができます。
再雇用による実質的な家計改善額 = 再雇用後の手取り収入 - 働くために増える支出
再雇用後の収入だけでなく、通勤費、昼食代、被服費など、働くことによって増える支出も考慮します。
最終的には、再雇用する場合と完全退職する場合のキャッシュフロー表を比較し、資産残高がどのように変わるかを確認することが大切です。
3. 基本知識:再雇用を考える7つの視点
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再雇用では雇用条件が変わることがある
再雇用とは、定年退職後に、同じ会社やグループ会社などで引き続き働く仕組みです。
多くの場合、定年前の雇用契約はいったん終了し、新たな条件で雇用契約を結びます。
そのため、次のような項目が変わることがあります。
- 雇用形態
- 給与や賞与
- 勤務日数や勤務時間
- 役職や責任
- 仕事内容
- 契約期間や更新条件
再雇用は、定年前と同じ働きかたがそのまま続く制度とは限りません。
会社から提示された条件について、給与だけでなく、仕事内容や勤務時間、契約更新の条件まで確認する必要があります。
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65歳までの雇用確保と70歳までの就業機会は意味が異なる
定年を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの雇用を確保するため、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかを実施する必要があります。
一方、70歳までの就業機会の確保は、事業主の努力義務です。
したがって、70歳まで必ず同じ会社で働けるという意味ではありません。
また、制度が用意されていても、自分が希望する勤務日数や仕事内容で働けるとは限りません。
まずは勤務先の就業規則や再雇用制度を確認し、「何歳まで、どの様な条件で働けるのか」を具体的に把握しましょう。
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再雇用収入には資産の取り崩しを抑える効果がある
再雇用で給与収入が得られれば、生活費の不足分が小さくなり、退職金や預貯金の取り崩しを抑えられます。
たとえば、毎月10万円を生活費に充てられれば、単純計算では5年間で600万円になります。
実際には税金や社会保険料などが差し引かれますが、毎月一定の収入があることは、60代前半の資産残高に大きく影響します。
再雇用収入は、現在の生活費を補うだけでなく、65歳以降、さらに70代以降の資産を守る役割もあります。
ただし、再雇用後の給与は定年前より下がることが多いため、現役時代と同じ生活費を前提にしないことも大切です。
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高年齢雇用継続給付は補足的な制度として考える
高年齢雇用継続給付は、60歳以降に賃金が大きく下がった場合に、一定の要件を満たす人へ支給される雇用保険の給付です。
主な対象は、60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者で、60歳到達時点などと比べて賃金が75%未満に低下した場合です。
2025年4月1日以降に60歳に達した方などについては、支給率の上限が各月の賃金の10%に変更されています。
ただし、実際の支給額や対象となるかどうかは、雇用保険の加入期間や賃金の低下率などによって異なります。
この給付だけを前提に資金計画を立てず、勤務先の担当部署やハローワークで確認しましょう。
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体力・健康・家族の事情も判断材料になる
60歳以降は、体力や健康状態の個人差が大きくなります。
給与面では条件がよくても、長時間勤務や通勤の負担が大きければ、働き続けることが難しくなる場合があります。
確認したいのは、次のような点です。
- 勤務日数や勤務時間に無理はないか
- 通勤時間や通勤方法に負担がないか
- 仕事内容や責任が重すぎないか
- 自分の通院や治療と両立できるか
- 家族の介護や生活上の事情に対応できるか
再雇用では、「何歳まで働けるか」だけでなく、「何歳まで無理なく働きたいか」を考えることが大切です。
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仕事内容や立場の変化を受け入れられるか
再雇用後は、役職や責任、仕事の裁量が変わることがあります。
元部下や後輩の指示を受ける立場になることや、定年前とは異なる仕事を担当することも考えられます。
給与と仕事内容のバランスに不満を感じたり、自分の役割が変わることに戸惑ったりする場合も考えられます。
一方で、責任が軽くなり、自分の時間を確保しやすくなる人もいます。
再雇用後の立場を「現役時代の延長」と考えるのではなく、完全リタイアに向けた新しい働きかたとして捉えられるかどうかも重要です。
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社会保険と年金への影響を確認する
再雇用後も一定の加入条件を満たす場合は、健康保険や厚生年金保険、雇用保険に加入します。
その場合、給与から社会保険料が差し引かれるため、額面の給与と実際の手取りは異なります。
一方、厚生年金に加入して働いた期間は、将来の年金額に反映されます。
65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら働く場合には、在職中も年金額が定期的に見直されます。
また、老齢厚生年金を受け取りながら働く場合は、給与と老齢厚生年金の合計額によって、年金の一部または全額が支給停止となることがあります。
これが在職老齢年金です。
令和8年度の支給停止調整額は月額65万円ですが、この金額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されるため、実際に年金を受け取る時点の制度を確認する必要があります。
再雇用後の収入は、額面ではなく、税金や社会保険料、年金への影響を含めて判断しましょう。
4. 注意点:再雇用を収入だけで判断しない
注意点1:定年前と同じ給与や待遇を前提にしない
再雇用後は、給与や賞与、役職、仕事内容が変わることがあります。
「同じ会社だから、これまでと同じ条件で働ける」とは考えず、提示された労働条件を確認しましょう。
注意点2:額面給与だけで比較しない
給与からは、税金や社会保険料などが差し引かれます。
また、働くことで昼食代や被服費などが増える場合もあります。
清潔日に実際に使える金額を把握するため、額面ではなく手取りと支出の両方を確認しましょう。
注意点3:退職や健康を後回しにしない
収入を得るために無理をして健康を損なってしまうと、医療費が増えたり、その後の生活に影響したりする可能性があります。
勤務日数や勤務時間を減らした働きかたも含めて検討することが大切です。
注意点4:給付や社会保険は個別に確認する
高年齢雇用継続給付や社会保険の取り扱いは、年齢、給与、勤務時間、雇用保険の加入期間などによって異なります。
一般的な説明だけで判断せず、勤務先、年金事務所、ハローワークなどで自分の場合を確認しましょう。
注意点5:60歳から65歳までだけで判断しない
再雇用の効果は、60代前半の収入だけで判断できません。
65歳以降の年金収入や生活費、退職金・預貯金の残高まで含めて考える必要があります。
再雇用する場合、勤務日数を減らす場合、完全退職する場合など、複数のキャッシュフローを比較してみましょう。
5. 自分ごと化:再雇用を考える10の確認項目
次の項目について、ご自身の状況を確認してみましょう。
- 再雇用後の給与、賞与、手当と手取り額を確認しているか
- 再雇用によって退職金や預貯金の取り崩しをどの程度抑えられるか
- 勤務日数、勤務時間、通勤を無理なく続けられるか
- 仕事内容、役割、責任の変化に納得できるか
- 自分の健康や通院、家族の介護などと両立できるか
- 健康保険、厚生年金、雇用保険の加入条件を確認しているか
- 高年齢雇用継続給付の対象となる可能性を確認しているか
- 契約期間、更新条件、何歳まで働けるかを確認しているか
- 収入、生活リズム、社会参加など、働く目的を整理しているか
- 再雇用する場合と完全退職する場合をキャッシュフロー表で比較しているか
このうち、特に重要なのは、1・3・6です。
1. 再雇用後の手取り額 / 3. 無理なく続けられる勤務条件 / 6. 社会保険の加入条件
この3項目を確認すると、再雇用を「収入・体力・社会保険」の3つの面から具体的に判断しやすくなります。
この記事を読んだ方は、まず、
勤務先から提示される再雇用条件をもとに、「毎月の手取り額」「勤務日数・勤務時間」「加入する社会保険」を書き出してみましょう。
6. まとめ:再雇用は資産を守る手段の一つ
再雇用は、60歳以降の収入を確保し、退職金や預貯金の取り崩しを抑えるための有効な選択肢です。
<今日のポイント>
- 再雇用は60歳から65歳までの収入空白期間を補う選択肢になる
- 給与収入によって退職金や預貯金の取り崩しを抑えられる
- 再雇用後は給与、仕事内容、役職などが変わることがある
- 額面給与ではなく、税金や社会保険料を差し引いた手取りで考える
- 体力、健康、通勤、家族の事情などを含めて判断する
- 社会保険への加入は、手取りや将来の年金額に影響する
- 再雇用する場合と完全退職する場合をキャッシュフロー表で比較する
再雇用で働くかどうかに、すべての人に共通する正解はありません。
大切なのは、収入を得られるかどうかだけでなく、その働きかたを無理なく続けられるかどうか、退職後に希望する生活と両立できるかを確認することです。
ご自身の場合、再雇用で働いた場合と完全退職した場合で、退職金や預貯金の減り方がどのように変わるのかを確認したい方は、キャッシュフロー表で比較することが有効です。
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出典・参考(2026年9月14日現在)
厚生労働省「高年齢者の雇用」
厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」
日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
※本記事は、退職後の働き方や社会保険に関する一般的な情報を提供するものです。
※実際の雇用条件、社会保険の加入、高年齢雇用継続給付、年金の取り扱いは、年齢、勤務条件、給与、加入履歴などによって異なります。
※勤務先、年金事務所、ハローワークなどで最新の情報をご確認ください。
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